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「私の中のあなた」あらすじと感想。自分が生まれてきた意味とは…?

私の中のあなた

急性前骨髄球性白血病と診断された姉を助けるべく、遺伝子操作によってドナーベイビーとして生まれてきたアナ。臍帯血移植に輸血や骨髄移植と、生まれて間もない時から必要とあれば犠牲を強いられてきた。そして時が経ったある日、若干11歳にして腎臓の片方の提供を求められた彼女は、自ら有名弁護士事務所へ足を運び両親を訴える訴訟を起こす。姉妹の母親役をキャメロン・ディアス、両親を訴える妹役をアビゲイル・ブレスリンが熱演!

急性前骨髄球性白血病

ある朝。2歳になった娘ケイトが起きて来ず、仕方なく母親サラが起こしにいくと、ケイトの様子が少しおかしい。背中を見ると、まだらにアザが広がっていた。サラはケイトを病院へ連れて行き検査をすると、別の病院を紹介される。紹介された先の病院で再び検査をして分かった病名は、「急性前骨髄球性白血病」。治療には骨髄移植が必要で、ドナーを見つけるべく母親のサラ、父親のブライアン、兄のジェシーの骨髄を調べるも、型は一致しなかった。

こうなると、ドナー登録をして型が一致する人が現れることをひたすら待つしかない。焦る両親に医師は、これはオフレコで聞いて欲しいと言い、受精卵の段階で遺伝子操作を行ってドナーに適合する型を持つ子を作る術を教えた。サラとブライアンは二つ返事で承諾し、意図的に妊娠。そしてドナーベイビーとしてアナが生まれた。

全てはケイトのために

アナは順調に育ち11歳になる。サラはあの日、ケイトの病気が分かってから弁護士の仕事をやめていた。家にはサラの妹が手伝いにきている。全てはケイトの延命のため、食事は全てオーガニック。きちんと熱を通し殺菌処理。正常な家族ではないものの、お互い愛し合い、みなベストを尽くしているとアナは思っていた。

そんなある日、ベッドで寝ていたケイトが突然発作を起こし大量に吐血。救急医療センターへ運ばれ検査をすると、とても深刻な状態となっていた。医師の見解では、この病気は既に化学療法が望めないレベルにまで達しており、それに加え腎不全も患っていると言う。アナは片方の腎臓提供を求められるが、片方を摘出したとしても生きられるとはいえ、今までのような生活はもう送れなくなってしまう。アナは初めて「NO」を突きつけた。

弁護士を依頼

アナは法律事務所へと足を運び、弁護士キャンベル・アレクサンダーと会う。ここはTVCMでも流れているほど有名な大手弁護士事務所で、勝率91%をうたっていた。キャンベルはアナを見るなりガールスカウトの女の子か何かだと思ったが、話を聞くことにする。「あなたの問題は?」そう聞かれたアナはキャンベルへ茶色い封筒を差し出した。

アナは自分が白血病の姉を救うために生まれてきたこと、ドナーベイビーとして生まれたため現在臓器の提供を強いられており、自分の体を守るため両親を訴えたいと話す。強烈な依頼内容にキャンベルが資料に目を通すと、そこにはアナが生まれると同時に臍帯血白血球、骨髄、リンパ球、幹細胞まで提供したことが記されていた。アナは11年間で8回の入院、6回の中心静脈カテーテル、骨髄穿刺と幹細胞採取を各2回行い、それに伴う出血で血球増殖の注射が施され、アザや傷跡が残っている。更には、吐き気止め、モルヒネ、睡眠導入剤も投与されていた。

臓器提供を拒めば姉が死ぬことは分かっていると言いながら、アナは淡々とキャンベルへ有り金の700ドル余りを差し出す。

アナの気持ち

後日、ケイトの病床でサラは封筒を受け取った。中を確認すると、「両親の干渉を拒み、臓器提供を含む一切の医療行為を拒否する。」という文章が書いてあった。キャンベルがアナの依頼を正式に受け、送りつけた書類だ。そしてその場にいたアナ。サラは動揺してどういうことなのか説明を求めると、アナは弁護士を雇ったことを伝える。サラとアナは激しい言い争いになり、感情的になったサラはアナを叩いてしまった。アナは病室を飛び出した。そしてその夜、家族の前で訴訟に踏み切った経緯を話す。

アナは、手術は危険だし痛いことはしたくない。そしてそれだけならまだしも、臓器提供によって腎臓が1つになったら将来自分はスポーツやチアリーディングが出来るのか、妊娠は可能か、移植したはいいものの、いい効果が得られなかったら自分はどうなるのか、それにパーティーやビーチにも行きたいと声を張り上げた。そしてアナは医者から「臓器提供手術をしたら一生無理できない」と言われたことを明かし、自分はそんな生き方は嫌だと必死に訴える。そして母親のサラに向かい、自分はどうなってもいいのかと問いかけ席を立った。

その後の両親

父親のブライアンは消防士で、同僚の隊員たちへ食事を作りにいくためアナを職場へ連れて行く。アナは隊員たちからも可愛いがられており、皆と仲が良かった。大人たちに交じり楽しそうに会話しているアナを見つめ、いつの間にこんなに大きくなったのかと感慨深く思うブライアン。そして今回の訴訟の件について、アナを説得するのは難しいだろうと考えていた。

母親のサラはキャンベルの事務所を訪ね、カリフォルニア州では子供が親から独立できるのは14歳からで、11歳であるアナは訴訟を起こすことは出来ないと、元弁護士の千恵を絞って訴えかける。だがキャンベルは、「11歳でも医療行為を拒否する権利はある。僕は彼女を助ける」と伝えた。リスクについてアナはちゃんと理解していたというサラに対し、「理解?たった5歳の子が?」とたたみかけると、答えに困ったサラは事務所を出て行った。

サラは自宅のベッドで2週間も寝たきりのケイトに、たまには外へ出て太陽の光を浴びようという。しかしケイトは病人の自分を人がジロジロ見るから嫌だと答えた。ケイトの髪は治療の影響で抜け落ちてしまっていたのだ。そんなケイトを見て部屋を出たサラは、しばらくして部屋に戻り家族を驚かせる。なんと、髪を全部刈り上げてしまったのだ。これで同じ髪型になったケイトとサラ。その後は人目を気にすることなく外出し、インスタントカメラで写真を撮ったりして楽しんだ。

ケイトの気持ち

ケイトは自身の命がそう長くないことを分かっていた。死ぬことについてはそう怖くないと思っている。そう自分に言い聞かせた。ケイトはそんなことよりも、自分の病気のせいで家族から色んなものを奪ってしまっていることに心を痛めていた。

兄ジェシーは幼い頃から失語症だったが、自分の病気のせいで二の次になっている。パパからママを奪い、ママは全てにおいて犠牲を払っているし、アナには生まれた時から傷つけてしまっている。そのこと全てを思いつめていた。

ある青年との出会い

そして入退院を繰り返していたある日、同じく白血病の治療に来ていたテイラーという青年に会う。すぐに意気投合した2人は電話で話すようになり、体調がいい時は外へ食事にでかけたりもしていた。放射線治療も効果がなかったケイトを、テイラーはとても元気づけてくれている。そしてある晩、2人はキスをした。家に帰ると、ケイトはデートでの出来事を真っ先にアナへ報告する。アナはとても興味津々にケイトの話を聞いていた。

後日、テイラーは病院内で開かれるダンスパーティーへケイトを誘った。ウィッグを付けて着飾ったケイトはとても可愛らしく、家族全員おおはしゃぎで写真を撮りまくる。サラはいつも大人しく側で見守ってくれている父ブライアンの元へ行きハグをすると、「パパ大好き」と感謝を伝え家を出発した。病院に着き、ダンスパーティでダンスを踊っている途中、会場を抜け出した2人は空き部屋のベッドの上で抱き合う。お互い出会えた事に感謝しながら愛を確かめ合った。

しかしそれから3日経ってもテイラーからの連絡がない。ケイトは不安と怒りで感情を爆発させた。サラが病院の看護師に確認すると、テイラーは急激に病状が悪化し、既に亡くなっていたことが分かった。

ケイトはブライアンにビーチへ行きたいとお願いする。ブライアンが担当医に外出の許可を求めると、本来はルール違反だが、もう先の長くないケイトを想い許可を出してくれた。ブライアンが海へ連れて行くため一旦家へ戻ると、サラは今すぐ病院へ戻るようヒステリックを起こす。そんな妻を振り切りブライアンはケイトをビーチへ連れて行った。

真実

その後、日に日にケイトが弱っていく中、アナの裁判が始まる。判事の前でアナとサラは激しく言い争った。すると突然兄のジェシーが法廷に割って入り、真実をぶちまける。この裁判は、臓器提供を受けても助からないと既に自分の死を受け入れたケイトが、アナとジェーシーに頼み込んで起こした裁判だったのだ。そしてジェシーは続けて、周りはみなケイトが死ぬということを分かっているのに、ママだけはそれを理解しようとしない。もう安らかに死なせてやって欲しいとジェシーはサラに訴えた。

その後、ケイトの病室に家族や親族が集まりケイトを元気付ける。それにケイトは明るくお礼を言いながら応えていた。そしてみんなが帰る時、ケイトの希望でサラにだけ残ってもらう。ケイトは手作りのアルバムをサラに見せ、いい人生だったと伝えると、その晩に息を引き取った。

それぞれの道へ

ケイトの葬儀が終わったころ、弁護士のキャンベルがアナを訪ねてきて、裁判に勝ったことを知らせる。彼にはてんかんの持病があり、自分の身体を自由にできないアナの気持ちが痛いほど分かっていたからこそ、この訴訟を引き受けた。

その後、家族はそれぞれ自分の道を歩み始める。サラは弁護士に復職し、ブライアンは早期退職をして問題を抱える若者たちへのケアを始めた。ジェシーは学校へ戻ると猛勉強に励み、奨学金を獲得してニューヨークの美術学校へ入学。

そして毎年ケイトの誕生日には、家族で同じ場所に集まり一緒に過ごした。

「私の中のあなた」総合評価

星4.3

とても重いテーマではあるものの、兄弟仲は良く、そこまで気持ちが沈まないところが唯一の救い。もし自分がアナの立場だったら、姉を救うか自分の人生を諦めるかのジレンマに押し潰されどうにもこうにもなっていなかったと思いますね。そしてケイトの立場だったら、生きたいと願う気持ちは妹の人生を奪ってしまうことになるジレンマと戦わなければならない。どちらにせよ、全員がハッピーになる結末なんてないのだろう…。そしてこの作品は小説が元となっているのですが、原作では兄妹が非行に走り、キャンベルの運転する車に乗ったアナが事故で脳死、アナが臓器提供をしてケイトが助かるというストーリーだそうです。こちらの方がより現実感が増しますが、あまりにも辛くてきっと見れなかったと思うので、この映画の設定で私は安心しました(笑)とても感動する作品なので、是非一度ご覧になってみてください。