サリア・カハヴァッテ本人の自伝を元に作られた実話の感動作！
先天性の疾患により視力の95パーセントを失ったものの、自らの血のにじむ努力と周りの人たちの助けを借り夢を叶える1人の青年のお話。
主人公サリーを思う家族の愛や、一生懸命サポートする親友のマックス、ハンディキャップがあると知っても指導してくれたホテルの人たち、そして同僚の仲間たち。全てが温かく、前向きな気持ちにさせてくれる、そんな映画です♪
突然の悲劇
スリランカ人の父とドイツ人の母の間に生まれたサリヤ（サリー）。両親と妹シーラとの4人暮らし。父親はホテルを経営しており、卒業したら一流ホテルマンになるのが夢だった。
しかし、ある日突然視界がボヤけ始める。それは日に日に悪化していった。
眼科を受診すると、先天性の疾患によって網膜剥離を起こしていることが判明。すぐに手術したが、視力の95パーセントが失われてしまった。それを知った父親は、夢を諦め盲学校へ転校するようサリーに言う。しかしサリーは夢を諦めるつもりはなかった。
転校を拒絶し、いつも以上に必死に頑張るサリー。黒板の文字が見えず、サリーは持前の記憶力を活かし先生の話を復唱しながら頭で記憶していった。そして家へ帰るとルーペを使って猛勉強。努力の甲斐もあり、サリーは学校を見事卒業してみせた。
卒業証書を父の元へ持っていったが、父親は全く興味を示さず部屋を出て行ってしまう。
それでもサリーは夢を諦めていなかった。
それでも夢は諦めない
就職するため、国内のホテルに次々と願書を送るサリー。視覚障害があることも包み隠さず、ホテルマンになることへの熱意をありったけ書いた。しかし、どこも不採用。障がい者はなかなかクビにできないから採用側も慎重になるという妹。それを聞いたサリーは、目の事を隠しミュンヘンにある5つ星ホテルへ願書を送る。
すると何も知らないホテル側から連絡が来て、面接を受けられることになった。目が見えないというハイリスクな面接に備え、目線の置き方や握手の仕方などを妹と一緒に特訓する。
そして面接当日、サリーは母と妹に見守られホテルへ入っていった。
歩数を計算し、ロビーで待つ面接官の元へ何とかたどり着いたサリー。場所を移動することになり歩き始めると、そこへ慌てて1人の青年マックスが割り込んでくる。マックスはサリーと同じくこの日面接を受ける予定だったが、まさかの1時間も遅刻していたのだった。
来る途中で大きな事故があったと嘘をつくマックスに、サリーがフォローを入れてあげた。面接官は人事部長であるフリート。彼は仕方なく2人の面接を同時に行うことにした。ホテルの中を一通り案内し、その間に質問をするフリート。面接が終わるとサリーは呼び、ホテルマンへの熱い想いに感銘を受けたと採用を言い渡す。
研修生活スタート
そして初出勤の日。集合場所のホテル裏口前に行くと、同じく採用された同期達がたくさん集まっていた。そこへ現れたマックス。彼も無事合格していた。大広間へ通された彼らは、これから始まる厳しい研修の説明をうけ、4人1チームに分けられる。サリーとマックスは同じチームだった。
早速ホテルの1室に移動し、ベッドメイキングと部屋の掃除のミッションを与えられる。
指導員がまず手本を見せるが、それを見ることが出来ないサリー。1人1部屋割り当てられ、サリーはこっそりルーペを使いながら必死に窓を磨いていた。
そこへマックスが突然現れ、変な窓の磨き方に疑問を持たれてしまう。仕方なくサリーは視覚障害の件をマックスに話し、他言しないようお願いした。その際サリーも、常にやる気なさそうにヘラヘラしているマックスへ、なぜホテルマンを選んだのかを聞く。マックスは父親がホテル経営しているからだと答えた。
それからマックスは、目が見えないサリーの為にホテル内の構造や掃除のコツを教え、何とかズルしながらも2人はベッドメイキングのテストに合格。
見知らぬ女性に恋をした
やがてキッチンの研修に入り、難しさは更に増していった。スプーンで皿の残飯を処理していた時、手元が見えないサリーの皿は汚れが残り、それを見た皿洗いのハミードにちゃんとやれと怒られる。しかしサリーの手つきを見たハミードは「目が悪いのか？」と聞いてきた。
仕方なくサリーは事情を説明。更に怒られるかと思っていたサリーだったが、ハミードは「俺に頼れ！」と味方になってくれた。ハミードはアフガニスタン・カブールの難民で、現地では外科医だったと自己紹介する。
その後、ハミードにゴミ出しを頼まれたサリーはゴミ捨て場へ行くと、どこからか女性の歌声を耳にした。顔は見えなかったものの、サリーはその女性に恋をした。後日、マックスの力を借り、彼女がラウラという名前でホテルに野菜を仕入れている農場の娘であることが分かった。
力になってくれた料理長
ある日、料理長のクローンがサリーに、肉のスライサーで肉を薄くスライスするよう仕事を与えると、断る訳にもいかず適当に作業したサリーはスライサーで指を深く切ってしまう。
その時、元外科医のハミードが手当してくれた。その光景をみていたクローン料理長は、ハミードの時と同じくサリーの目に疑問を抱く。
クローンはそれを確かめるためにサリーを呼び出し、自分の目の前にボウルを置いた。それに気づかずボウルを蹴とばしたサリーに、どういうことだと問い詰める。いよいよ誤魔化しがきかなくなり、クローンへも目のことを打ち明けた。
クローンは、自分の持ち場で事故は二度と起こさないで欲しいと強く言うと、肉のスライサーを分解させ、1から構造を覚えればもうケガはしないだろうと力になってくれた。
ワインについて勉強する時は、サリーの抜群の記憶力を生かし物覚えの悪いマックスへワインの習得に力を貸す。こうして2人はお互いに協力しあいながらミッションを1つずつクリアしていき、キッチンでの研修も見事に合格する。サリーは親身になって教えてくれた料理長のクローンに深く感謝する。次は受付だというサリーに「俺はずっと皿洗い」とハミードがボヤいた。
思い切って食事に誘う
受付の研修につくと、マックスは違う部屋番号のキーを渡してしまったサリーを得意の喋りで誤魔化し助ける。その後は順調にいき、接客態度も指導員の目に止まり受付での研修も難なくクリアした。
そして研修も終盤に差し掛かり、最も難しいバーテンダーの研修が始まる。サリーとマックスは研修前夜にバーカウンターへ忍び込み、お酒やテーブルの配置を事前に覚えた。
翌日。ハミードは、救急隊として働けるよう労働条件の変更を申し入れたが却下されてしまい、サリーに助けを求めて話していた。今の労働条件では皿洗いしか出来なかったからだ。
その時、偶然ラウラが前を通りかかる。手を振るラウラに気付かないサリー。ハミードは代わりに手を振っておいたと伝えるが、それを聞いたサリーはラウラを追いかける。そこで思い切って食事に誘ってみた。ラウラは「お店を決めておいてね」と言ってOKした。
最後の難関バーテンダー研修
お酒や配合、グラスの種類等、目が見えていても難しい研修内容。サリーはマックスと共に、マックスの父親が経営するレストランへ閉店後に行き、バーカウンターで夜通しカクテル作りの練習をする。
その後、サリーは初デートでこのレストランに来ることに決めた。目のことをラウラにちゃんと話した方がいいとマックスは忠告したが、とりあえず初デートはただ楽しみたいと言うサリー。仕方なくマックスはサニーにレストランのオススメ料理を教えた。
練習の甲斐あってか、サリーはカクテルテストも上手くいき、実践でもスマートにこなせるようになってきていた。
念願の初デート
そして初デートの日。目のことがバレないよう、待ち合わせはレストランにしていた。先に来てサリーが待つ。まもなくラウラも店に来た。オススメ料理を注文し、会話が弾む。すると、ラウラがオスカーという5歳のひとり息子がいる事を打ち明けた。サリーは戸惑うことなく、ありのままの彼女を受け入れ、気持ちが変わるどころか、更に好きになっていった。
食事が終わってサリーがラウラをタクシーまで見送る。その時、ラウラは今度息子と一緒に河原へ遊びに行かないかとサリーを誘った。一瞬戸惑ったが、サリーは快く承諾した。
1度目の警告
次の日、誰よりも早く出社し、お酒の銘柄を手触りで覚え始めるサリー。この日も接客は順調だった。しかし研修後、1人でグラスの片付けを行っていると指導員のクラインシュミットがやってくる。彼はグラスを見るなりサリーにやり直しを命じた。仕方なく再度グラスを洗い磨きあげるサリー。そこに再びクラインシュミットがやってきて、グラスを見るなりもう1度やり直しを命じる。段々イラついてくるサリー。
全然ダメだと叱責をくらい、ついに勢いで口答えしてしまった。お客様の前でも怒鳴るのかと、1回目の警告を受けてしまう。3回でクビだと言いクラインシュミットは去っていった。その夜、サリーは汚れたグラスと磨き上げたグラスを叩き、僅かな音の違いに気づく。
不幸の連鎖
日曜日。ラウラと息子オスカーとの3人で約束の河原へやって来たサリー。オスカーとも1日遊び、サリーにとても懐いていた。家に帰ったあとはラウラの話を沢山聞き、夜遅くに帰宅。疲れていたサリーは次の日、寝坊で遅刻してしまう。
急いでホテルに向かったが、2度目の警告を言い渡された。そこでもサリーは口答えしてしまう。次はクビだと怒鳴られた。
更には、研修が終わったあと携帯に不在着信が入っていたため確認するサリー。母と姉に呼び出されたサリーが2人の元へ行く。すると、父が家族を捨て故郷スリランカで再婚したことを聞かされる。しかも、貯金など金目のものを全て持ち出してしまっていたのだ。父の願いで家庭に入っていた母は急いで仕事を見つけなければならず、それまでの間、サリーは空き時間でバイトをしながらお金を稼ぐことになった。
疲労に蝕まれていくサリー
精神的に追い詰められたサリーは、厳しい研修やラウラとのデートに加えバイトも始める事になり、どんどん疲労が溜まっていく。やがて眠気を飛ばすために薬にまで手を出すようになっていた。
そんなある日、ラウラと息子のオスカーと3人で公園で遊んでいると、ラウラが仕事で1時間程離れなければならなくなり、その間サリーはオスカーの面倒を任された。不安に思うサリーだったが、目の件は伏せていたため仕方なく引き受ける。
オスカーと楽しく遊んでいると、マックスから今どこにいるのかと電話がかかってきた。その日はホテルで大事な結婚式が行われる日だった。すっかり忘れていたサリーは慌てふためくが、まだ指導員のクラインシュミットは来ていなかったため、マックスがそれまでに来れば何とかなると伝え、急ぐよう言った。すぐラウラに電話をかけ事情を説明すると、用事を済ませたラウラは公園に向かっている最中だった。それを聞きホッとするサリーだったが、電話を切るとオスカーがいなくなっていた。
見失ったオスカー
今さっき一緒に遊んでいたサリー。オスカーの名前を大声で何度も叫び、公園で遊んでいた子供たちに片っ端から確認する。そこへラウラが戻ってきた。オスカーが居なくなったことを伝え、ラウラも必死に探すがなかなか見つからない。目が見えず名前を叫ぶことしか出来ないサリーに「あなたも手伝ってよ！」と怒るラウラ。追い詰められたサリーは「目が見えないんだ！」と逆ギレしてしまう。
そんな状態で息子の世話を引き受けたのかと怒り心頭のラウラ。その後ラウラは無事オスカーを見つける事が出来たが、サリーを睨みつけるなりそのまま帰ってしまった。悲しいサリーだったが、急いでホテルへ向かった
追い出されたサリー
ホテルに着くと既に結婚式は始まっていたが、幸運にもクラインシュミットには遅刻がバレていなかった。薬を飲み、急いで着替えて会場に入る。そこへマックスがやってきた。「お前ラリってんのか？」と心配するマックス。そこにはとても”普通”ではないサリーがいた。薬のせいで、かろうじてうっすら見えていた目も霞んでしまっている。
マックスは裏で休んでろと気遣うが、サリーはマックスの静止を振り切りシャンパンを運ぶ。しかし足元はフラつき、ついにはテーブルクロスに足を取られ派手に転倒してしまった。クラインシュミットは驚き駆けつけ、グラスを片付けさせる。裏へ戻りタオルを手にしたサリーは、再度汚した場所へ向かうが、焦りからか思いのまま前に突き進み、今度はウエディングケーキに突っ込んでしまった。
大激怒のクラインシュミット。追い詰められたサリーは目が見えないことを大声で叫ぶと「出てけ！」と言われホテルを追い出されてしまう。
挫折
その後は酒と薬に溺れながらアルバイトを続けた。夢を失い自暴自棄になったサリーは、ある日錯乱状態のまま街を徘徊し階段から転落。気がつくと病院だった。横には妹のシーラが付き添ってくれている。そこへマックスもお見舞いにやってきた。目を覚ましたサリーを抱きしめるシーラ。サリーは情けない自分に涙が止まらなかった。
遂にサリーは、障害には抗えないと現実を受け入れようとしていた。それを聞いたマックスはサリーを元気づけようとサイクリングに誘った。それは山をマウンテンバイクで駆け降りるハードなもの。目が見えないサリーはビビってしまうが、マックスの声を頼りに山道を駆け抜ける。
マックスは、1人では無理でも2人なら何とかなると伝えたかった。サリーはマットのお陰でもう一度ホテルマンへの道に挑戦する決意をする。
最後のチャンス
サリーはホテルへ向かうと、指導員のクラインシュミットへ今までの行為を謝罪し、もう一度チャンスが欲しいと頼み込む。目が見えないからといって手加減はしないという約束のもと、何とかOKをもらった。
その後、サリーはバーテンダーとしてのテストに次々合格していく。そしていよいよやってきた最終試験のテーブルセッティング。制限時間内にどれだけできたかを競う。試験がスタートすると、みな一斉に取り掛かった。必要な物を取ってきて自分のテーブルに並べなければいけない作業は、目が見えないサリーにはとてもハードだった。
そこへクラインシュミットがやってきて耳打ちする。「何をやってるんだ、残り1分半だぞ！」と密かにエールを送った。残り時間を可能な限り頑張ってセッティングしたサリー。
しかし、全て終える前に時間がきてしまった。未完成なサリーのテーブルを見て、芳しくない表情の指導員たち。こうして長かった研修期間を終え、最終発表がなされた。
夢を叶えた瞬間
サリーは、テーブルセッティングに関しては不合格だったものの、他のテストがすごく優秀だったため、総合的な評価で見事合格となった。家族や指導員たち、そして仲間たちの助けを借りて夢を叶えることが出来たサリー。仲間たちみんなもサリーの合格を祝福した。
その後、お祝いのパーティーが開かれ、お世話になった人たちにお礼の挨拶をしていくサリー。色々あったクラインシュミットとも和解することができた。彼はサリーの才能を認め、自分の元で働かないかとオファーをする。しかしサリーは感謝をすると共に丁重に断った。サリーはマットと2人でレストランをやることにしたからだ。
後日、サリーは親友とレストランをオープンさせ、忙しくも楽しい日々を送っていた。
するとそこへ、あの日以来疎遠になっていたラウラが店を訪れる。「僕もママに嫌われたくなくて嘘ついたことあるよ」と息子に言われたといい、ラウラはサリーを許すことにした。2人は無事ヨリを戻すことに成功し、ハッピーエンドで幕を閉じた。
「5パーセントの奇跡～嘘から始まる素敵な人生～」の総合評価
星 4.6
一流のホテルマンになりたいという夢を持ち必死に頑張っていたさなか、突如背負うことになったハンディキャップ。それでもへこたれず、父親に見放されようとも希望を持ち、前を向いて歩いていくサリーの強さには本当に勇気をもらいます。
そして何より、父親以外の登場人物が全員いい人すぎるっ！！！こういった人との巡り合わせも、彼の人柄故でしょう。
ベタな表現でいうと「笑いあり・涙あり」といった内容ですが、見終わった後に気分の良さがずっと余韻に残るような、そんな映画でした♪
また実話に基づくストーリーではありますが、多少の相違はあります。
最後、ホテルへの就職を諦め親友マックスとレストランを始めたサリーですが、実際には研修先のホテルへ就職し、なんと15年間も周りに目の事を隠したままだったそうです（驚）
